こんにちは、紅サンタです!
ほとんど人は防火管理者の資格を取るために、講習を受けたと思います。
講習を受けるとほぼ確実に資格は取れるのですが、講習だけで防火管理者の業務内容を把握できる方は少ないのではないでしょうか。
講習で使用する教本(テキスト)を読み返せば確認できますが…

テキスト厚すぎて、読む気が起きない!

もうテキスト捨てっちゃったよ…
かなりボリュームのある教本なので、読み込むのは一苦労です。
結論を言ってしまえば、防火管理者の業務は大きく括ると・・・
- 消防計画を作成して、消防機関に届出ること
- 作成した消防計画に基づき、防火管理業務を行うこと
この2つだけなのですが、そもそも防火管理業務をある程度理解していないと、消防計画を作ることは困難です。
この記事では、私なりに業務内容の要点をまとめて解説したいと思います。
記事を読むうえでの注意点としては…

ここに書いてあること、全部やらなきゃいけないってことじゃないよ!
やれることを出来る限りやりましょう!
建物や事業所によって環境(設備、人員等)は千差万別です。項目によっては、必要ないものもあるでしょうし、費用や人員の問題で出来ない事もあるでしょう。
出来ないならば、代替案を立てるか、別の対策を強化することでカバーできることがほとんどです。
結局のところ防火管理の本質はリスク管理(マネジメント)ですので、出来ない事で発生しうるリスクを許容できるかを考えていきましょう。
防火管理者の業務の根拠は?

防火管理者の業務は、大まかに「こういったことをやりなさい。」ということが、法令で定められています。
業務の根拠となるものなので解説するのですが…
正直知らなくても業務を行う上で、あまり支障がない!
なので、飛ばし読みでも構いません。
「法令上の根拠があってやっていることなんだ。」程度の認識を持ってもらえば大丈夫です。
法令根拠
早速、根拠となる法令を見てみましょう。
第一項 防火管理者は、総務省令で定めるところにより、当該防火対象物についての防火管理に係る消防計画を作成し、所轄消防長又は消防署長に届け出なければならない。
第二項 防火管理者は、前項の消防計画に基づいて、当該防火対象物について消火、通報及び避難の訓練の実施、消防の用に供する設備、消防用水又は消火活動上必要な施設の点検及び整備、火気の使用又は取扱いに関する監督、避難又は防火上必要な構造及び設備の維持管理並びに収容人員の管理その他防火管理上必要な業務を行わなければならない。
長いのでマーカーを引いたところだけ見れば大丈夫です。要約すると…
これだけ見ると、やることは少なく見えますが、これは大分類だと考えてください。
「消防計画に基づいて」 ⇒ 消防計画に定める項目 = もっと細かい業務があります。
それが「消防法施行規則第三条(防火管理に係る消防計画)」に記載されていますが、長くて読んでられないので、興味がある方のみ調べてみてください。
その長いものを、下の記事でかみ砕いて解説します。
防火管理業務には、関係法令(関連する法律、都道府県や市区町村等が定める条例)により、消防計画に定めて行うもの(主に火災以外の地震、風水害等の災害に対する対策)もありますが、この記事では、防火管理業務の基礎となる消防法施行規則第三条により定めて行うものに関してのみ解説し、関係法令により、消防計画に定めて行うものは省きます。
関係法令により、消防計画に定めて行うものを省く理由は、その内容が防火管理業務の基礎の上に立つ、プラスアルファ的な業務だからです。
「行わなくても良い」というものではありませんが、まずは基礎的な業務について理解し、後から追加したほうが、理解しやすいと個人的に考えるからです。
消防計画に定めて行うものイメージは、下図のとおりです。

消防計画に基づく、防火管理業務の基礎内容とは?

私は法令(消防法施行令第三条の二)で書かれている項目で業務内容を解説すると、全体のイメージ像が見えづらいと思っています。
なので、理解しやすいように、行う業務の内容を3分類に分けて解説します。
予防管理

病気の予防の基本は、手洗い、うがいを思い浮かべる方が多いと思います。日々の行動により、菌やウイルスを身体に入れないようにすれば、大半の病気を予防できるという訳ですね。
同じように危険要因を排除すれば、数ある災害の中でも火災だけは、大半のものが予防できます。
また、いくら完璧に予防をしても、起こると時には起こってしまうのが災害です。
いつ起きるとも限らない災害のため、施設や設備等をいつでも支障なく使用できるように管理しましょう。
予防管理は、複雑なことをする訳ではありません。一番大事なのは手洗い、うがいのように予防管理を習慣化することです。
意識せずとも当たり前にしていることも含まれていますが、それも立派な予防管理です!
火気の使用又は取扱いの監督
当たり前ですが、火種となるものを不適切に使用・処理したりすれば、火災に向かって一直線です。適正な管理監督が必要となります。
喫煙
喫煙場所を指定して、指定場所以外の喫煙を禁止すること。吸殻の確実な処理、灰皿等の器具を設置する場合は、器具の清掃についても監督します。
厨房機器、火気設備、器具
使用前後に点検を行い、周囲を整理整頓し安全を確認して、正しい使用方法で使用すること。こまめに清掃をすることを監督します。また、使用禁止場所を定めます。
危険物品
基本的に持ち込まない、持ち込ませないことを監督します。
放火防止対策
人のいない死角となる場所に、可燃物が乱雑に放置されている場合に放火されやすいため、放火しづらい環境づくりをすることが自己防衛となります。
可燃物管理
建物内外の整理整頓を行うこと。また、廊下、階段、トイレ等の死角となる場所に可燃物を置かないことを監督します。
施錠管理
物置、倉庫等を施錠管理することを監督します。
監視体制
不特定多数が出入りする出入口の監視、定期的な巡回体制、監視カメラ等による死角場所の監視等を行います。
施設・構造の維持管理
建物の廊下、階段、出入口は災害時の主な避難経路とされることから、避難の支障となるものや、火災が起こり避難不能となる原因となる可燃物が置かないように維持管理します。
火災時に炎や煙が広がらないように防ぐ建物の構造(防火戸、防火シャッター等)が正常に作動するように点検整備し、閉鎖障害となるものを置かないように維持管理します。
自主検査(チェック体制)
上記3項目(火気の使用又は取扱いの監督、放火防止対策、施設・構造の維持管理)のため、時期(就業時等)を決めて、組織的にチェックを行います。
法定点検・設備維持管理
消防法で定められた点検は3種類あり、点検によって不備が見つかった場合は、改修を促します。
ここではほぼすべての建物で必要となる消防用設備等点検のみ紹介します。
消防用設備等点検
建物には消防用設備(消火器、誘導灯等)が法令に基づき設置されています。せっかく設置されていても、点検を怠り、災害時に使えないのでは意味がありません。
基本的には、資格を持った業者に点検と整備を依頼して、維持管理します。
収容人員の適正管理
建物や事業所内に過剰に人がいる場合、災害時には混乱や事故を誘発してしまいます。想定した施設利用人数が超えないように管理します。
また、施設で把握している利用者(宿泊者等)の情報を管理し、災害時の避難誘導等に活用します。
工事中の安全対策
工事に伴い設備や通常の避難経路が使えない場合や、工事の為の火気器具、危険物品を持ち込む等、その時々の臨時の安全対策と工事人の順守させることを定めます。
自衛消防

どんな災害でも、発生時にその時その場にいるのは自分達だけです。
公的機関(主に消防)の到着までは時間がかかるため、一次的には自分達は勿論のこと利用者も守るために活動(自衛消防活動)を行わなくてはいけません。
そして、災害発生時は、一刻一秒の判断の遅れが被害の拡大につながるため、対策を講じて、即座に動ける体制を作っておくことは重要です。
自衛消防の組織(自衛消防隊)編制
災害発生時には、細かな指示を出していていは、その間に被害が拡大してしまいます。その為、事前に組織的に行動できる様に役割を定めます。
基本的には、防火管理者をリーダー(自衛消防隊長)として、それぞれの役割の班を編成することになります。俗に「自衛消防隊」と呼ばれる組織で、編制例は下の図のとおりです。
なお、人員の少ない事業所は、各役割を兼任することもあります。

自衛消防隊長
各班に統括し、指示を出すリーダーです。各班の動きを把握している防火管理者が主に行う役割で、防火管理者が不在時の代役も指定しておくと実効的になります。
通報連絡班
119番通報、関係者への連絡や各班からの情報の集約を担う、自衛消防隊長の補佐役として活動します。
初期消火班
災害発生した現場に直行し、火災時には消防用設備(消火器、屋内消火栓等)を使用して、消火作業を行います。
避難誘導班
災害発生時に曲がり角や出入口に配備して、利用客等の避難を誘導する他、避難障害とな物品があれば除去します。
その他の班
人員に余裕がある状況等、必要に応じて編制します。編制しない場合は、主に避難誘導班が活動を兼任することが多いです。
安全防護班は、エレベータの停止、防火シャッターの閉鎖等、二次災害の防止や、災害の拡大を防止する活動を行います。
応急救護班は、逃げ遅れの救出、避難後の負傷者の応急救護等を行います。
自衛消防活動
自衛消防の組織(自衛消防隊)の活動内容を定め、災害時に被害を最小限にするため、活動を行います。
教育訓練

予防管理、自衛消防どちらも、防火管理者1人で行う事は困難です。
防火管理業務は、皆で協力して行うものであることから、管理監督者として、従業員等に予防管理について教育すると伴に、災害時に適切に自衛消防ができるように訓練を行いましょう。
防火防災教育
防火管理について、建物・事業所の皆が共通認識として持っていない事には、組織的に防火管理を行う事はできません。
建物や事業所内の従業員等にも予防管理を実行させるためにも、教育を行いましょう。
自衛消防訓練の実施
災害時の異常な環境下でも、適切な行動が取れるよう消防用設備の取扱いや、行動要領を学び、組織的に行動できるように訓練します。
まとめ
防火管理がどういったことをすれば良いか、イメージはできたでしょうか?
正直やってみないとわからないことも多いため、今は「なんとなく」イメージできれば十分です。
さて、記事が長くなったため、最後にこの記事の内容の要点のみおさらいします。
消防法施行令第三条の二(防火管理者の責務)
- 消防計画の作成、届出
- 消防計画に基づく防火管理の実践
中分類 | 小分類 | 内容 |
---|---|---|
予防管理 | 火気の使用又は取扱いの監督 | 火気管理監督 |
放火防止対策 | 放火されない環境作り | |
施設・構造の維持管理 | 避難経路、防火区画等の維持管理 | |
自主検査 | チェック体制の確立 | |
法定点検・設備維持管理 | 消防用設備等の点検実施と維持管理 | |
収容人員の適正管理 | 災害時の混乱防止のため、過剰な入場を制限 | |
工事中の安全対策 | 工事障害等に対する臨時の安全体制確立 | |
自衛消防 | 自衛消防の組織編制 | 災害時の役割・任務分担 |
自衛消防活動 | 災害時に自衛消防活動を実践 | |
教育訓練 | 防火防災教育 | 従業員等と伴に予防管理を行うための教育 |
自衛消防訓練 | 災害時に適切な行動をとるための反復訓練 |
※この表は、各種条例に基づく業務は除いています。
次のステップは防火管理を始める一つの山場、実際にやってみるために、いつ、誰が、何をやるのかの消防計画づくりになります。
これを超えれば、防火管理の基礎が出来上がりますので、頑張っていきましょう!
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